「客室清掃って、底辺の仕事なんじゃないの?」
そんな言葉を、ネットや現実のどこかで聞いたことがあるかもしれません。
実際、私も50代でこの仕事を始めたとき、「こんな仕事をしていて、恥ずかしくないの?」というような視線を感じたことがありました。
でも、2年以上この現場で働いてきた今は、胸を張って言えます。
客室清掃は、決して「底辺」なんかじゃない。
そして、「人の価値は、やっている仕事だけでは決まらない」とも。
もちろん、時給が安いことや評価されにくい現実はあります。
頑張っても報酬に直結しにくい、つらい一面もある。
それでも私は、この仕事を「自分に合った働き方」として続けています。
この記事では、50代の私が実際に働いてきた中で感じた、
「底辺って言われがちな清掃バイトの、リアルな価値」についてお話しします。
- 「客室清掃=底辺」と言われる理由と、そのイメージの背景
- 実際に現場で働いて感じた「誇り」と「やりがい」
- 時給や待遇のリアルな実情と、それでも続けられる理由
- 「底辺」と呼ばれても、自分なりの働き方を肯定できる視点
なぜ「客室清掃=底辺」と言われるのか?

正直なところ、客室清掃は底辺の仕事といった声をネット上で見かけたことがあります。
SNSや掲示板では、「誰でもできる」「肉体労働」「時給が安い」といった言葉とともに、清掃の仕事を見下すようなコメントも少なくありません。
たしかに、客室清掃という仕事は学歴も資格も必要ありません。
体力があれば誰でも始められる仕事です。
実際、10代〜70代まで幅広い年齢層の方が働いていて、未経験からスタートする人も多いです。
だからこそ、
「誰でもできる=価値が低い」
「選ばれなかった人がやる仕事」
といった、偏った見方をされてしまうのかもしれません。
実は私も、知人にこの仕事をしていると話したときに、
「え?清掃って、あのホテルの部屋の?」と少し驚かれたことがありました。
本人は悪気がなかったかもしれませんが、その一言に下に見られてるような感覚を覚えたのも事実です。
でも、そういった偏見は、あくまで表面的なイメージです。
実際に現場で働いてみると、決してラクな仕事ではありません。
時間との戦い、細かいルール、チームプレーの大切さなど、求められることは意外と多い。
それでも、世間のイメージにはキツい=底辺という先入観が根強く残っているように感じます。
働いて感じた「底辺じゃない」理由
実際に2年以上、客室清掃の仕事を続けてみて思うのは、
この仕事は「底辺」なんかじゃなく、地に足がついた「ちゃんとした仕事」だということです。
まず、清掃というのは「人が気持ちよく過ごす空間を整える」仕事です。
ホテルでいえば、お客様が1日の疲れを癒す場所。
その環境を整える役割を担っているというのは、とても意味のある仕事だと感じています。
また、現場ではチームワークがとても重要です。
担当する部屋数は個人のスピードや経験値によって異なりますが、
時にはお互いに声を掛け合いながら、効率よく仕事を進める必要があります。
「ただ黙々と掃除してるだけ」と思われがちかもしれませんが、
実際には、段取り力・気配り・時間管理能力が問われる仕事です。
とくに、水回りやリネン、アメニティの補充などには細かいルールがあり、
覚えるまでにはそれなりの時間と努力が必要です。
そして何より、年齢や性別に関係なく、「できる人」は評価されます。
私の職場でも、50代・60代でも手際よく作業をこなしている方は多く、
若いスタッフからも一目置かれている場面をよく見かけます。
逆に、20代や30代のスタッフでも、丁寧さや責任感が足りなければすぐに辞めてしまうことも。
つまり、年齢や職歴ではなく、「仕事に向き合う姿勢」がすべてなのです。
こうして見てみると、客室清掃は「底辺」どころか、
人を支える、社会を支える仕事、としての価値があると、私は実感しています。
「底辺」と感じる瞬間もゼロではない
とはいえ、客室清掃の仕事がいつも誇りに満ちているかというと、そうでもありません。
やはり現実には、「ちょっとこれは割に合わないな…」と感じる瞬間もあります。
たとえば、どれだけ部屋数を多くこなしても時給は変わらないこと。
他の人の分までフォローしても、感謝の言葉はもらえても、給与には反映されません。
私の勤務先では、頑張ったからといってインセンティブが出ることもなく、
時給が上がるとしても30円〜50円程度。正直モチベーション維持は簡単ではありません。
また、「頑張る人ほど仕事量が増える」という現場の空気もあります。
「あなた、早いからこの部屋もお願いね」と、次々と部屋数が割り振られることも。
これは「信頼されている証」ともいえますが、報酬が増えないまま負担だけが増えると、
「頑張り損かも」と思ってしまうのも無理はありません。
さらに、仕事の内容自体が「見えづらい」という点もあります。
お客様の前に出ることもなく、感謝される場面は基本的にありません。
キレイに仕上げても「やって当たり前」とされることが多く、
「自分の仕事が誰かの役に立っている」と実感しづらいのも現実です。
こういった要素が重なると、
「やっぱり底辺って思われるのも仕方ないのかな…」と
心がくじけそうになることも、正直ありました。
でも、そんなときに思い出すのが、
「見えないからこそ大事にされるべき仕事もある」ということ。
だからこそ私は、自分の仕事を見下すのではなく、
地に足をつけて「自分なりの価値」を見いだしていこうと決めています。
それでも清掃バイトを続ける理由

「底辺」と思われることがあっても、私は今も清掃の仕事を続けています。
なぜなら、この仕事には他にはない働きやすさと心地よさがあるからです。
自分のペースで働ける
客室清掃の仕事は、基本的に1人で黙々と作業するスタイル。
任された部屋を、時間内に丁寧に仕上げることが求められます。
そのため、「今日は集中して頑張ろう」「今日は少しゆっくりめに」といったように、
ある程度は自分の体調や気分に合わせて調整できます。
私のように50代になってくると、体力や気力の波が出てくるので、
「自分のリズムで働ける」というのは大きなメリットです。
無駄な人間関係が少ない
職場では、必要最低限の会話はありますが、
ずっと誰かと話しながら働くような環境ではありません。
そのため、職場のストレス要因になりがちな「無駄な人間関係」も少なめ。
私はこれが非常に気に入っていて、「静かに、淡々と仕事に向き合える時間」が
むしろ心のリセットになっていたりもします。
副業や家庭と両立しやすい
私がこの仕事を選んだ一番の理由はここかもしれません。
清掃の仕事は午前〜昼過ぎで終わるシフトが多く、午後の時間がまるっと空くんです。
この空いた時間を使って、私は副業(ブログやWebライター)に取り組んでいます。
また、人によっては介護や育児との両立もしやすいはず。
「体力的にムリのない範囲で働きながら、他のことにも挑戦したい」
そんな50代にとって、清掃バイトはちょうどいいバランス感覚のある仕事だと思います。
自分なりの「生き方」にフィットしている
50代に入ってから、「肩書き」よりも自分らしさを大事にしたいと思うようになりました。
毎日スーツを着て、会議やノルマに追われていた頃よりも、
今の方が、ずっと「自分らしく」生きている実感があります。
決して楽ではありませんが、
この清掃の仕事には「地味だけど、ちゃんと社会を支えている」という誇りがあります。
それに、誰かの評価ではなく、自分の価値観に従って働けることにこそ、
私は魅力を感じています。
まとめ|底辺かどうかを決めるのは、自分自身

「客室清掃って底辺じゃない?」
たしかに、そんな声を耳にすることはあります。ネットでも見かけます。
でも結局のところ、その仕事が「底辺」かどうかを決めるのは、自分自身なんだと思います。
いくら他人に「すごい仕事だね」と言われても、自分が納得していなければ意味がないし、
逆に「そんな仕事、大変そう」と言われても、自分の中に誇りや納得感があればそれで十分。
私はこの仕事に、派手なやりがいや名誉は感じていません。
でも、「誰かの滞在が気持ちよくなるように整える」という意味では、
とても大事な役割を担っていると感じています。
それに、客室清掃の仕事は「自分らしく働く」ことに向いているんです。
自分のペースで、静かに、体を動かしながら社会とつながっていける。
これが、私にとっての「豊かさ」の一つのカタチです。
さらに言えば、この仕事はAIやロボットに置き換えられにくい仕事でもあります。
部屋の広さやベッドの位置、忘れ物の対応や細かい気配りなど、
マニュアルだけではこなせない人の判断が求められる場面が多いんです。
つまり、見えないところで確かな価値を生み出す仕事。
たとえ「底辺」と言われても、
この仕事を選んで、自分なりの働き方を見つけた自分を、私は誇りに思っています。
他人の評価ではなく、自分の目で仕事を見て、
「自分にとって意味があるか」で判断する——
50代からの働き方って、きっとそういうものなんじゃないかと思うんです。